ゲレンデのグループ化

 古くは「国土開発」によるプリンスホテル系ゲレンデがありましたが、最近では経営不振に陥ったゲレンデをチェーン展開するパターンが増えてます。

 特にマックアースグループ、クロスプロジェクト、日本駐車場開発グループの進出は目立ちます。

 で、それぞれのグループで特色がありますので、ちょっとその辺をご紹介します。

 

2019年追記

 グループ化されたゲレンデの入れ替わりがかなり出てきました。現在の様子を入れてみます。

 

2022年追記

 更にグループの再編がありました。情報を更新します。

プリンスホテルグループ

旧国土計画であり、かつては一大勢力を誇ったスキー場グループです。現在でも

 ・富良野/雫石/苗場/六日町八海山/かぐら/妙高杉ノ原/焼額山/万座/軽井沢プリンス

と9のゲレンデを所有しています。自分もすべてのゲレンデに行ったことがあります。

 

スキーブーム時代には、プリンスホテルとセットでゲレンデを盛り上げていました。が、ここでは述べませんがいろいろな問題が発生し、このグループは解体してしまいました。

 

他の運営先に譲渡されたゲレンデもありますが、止む無く廃止のゲレンデもあります。苗場に行ったことがある方ならば今でも看板が残っている「三国スキー場」や「土樽スキー場」。この2つは苗場のエスケープとして結構利用する方も多かったのですが止む無く廃止です。

また、「表万座スキー場」は、鈴木商会グループに譲渡されましたが、あっけなく廃止に。

 

色々とありましたが、現在残っている9つのゲレンデは、やはりある意味「スキーが好き」な感じを醸し出しているような、いないような。

 

プリンスホテルグループの特徴といえば、「トップから、初級者でも滑れるようにコースを作る」だそうです。これは以前元社長だった堤さんがインタビューで言っていました。たしかに、どのゲレンデも初級者用の迂回を設置しています。ただ、この初級者用が、単になだらかにすればよいというレベルになってしまって、逆に滑りにくい斜面もちらほら。

 

また、ゲレンデにある飲食店は「アリエスカ」が定番であり、さすがプリンスホテルを持っているだけあって、味は一定基準を保っております。

昔はゲレンデごとにキャラクターがいたり、リフト券も統一デザインだったりと、スキー場のイメージ戦略に長けていました。

 

大きく期待を裏切られることはないゲレンデ、それがプリンスホテル系の最大の利点ではないでしょうか。

(この文章は2017年3月現在のものです)

 

プリンスホテルグループの動きが出てきたようです。インバウンド効果で訪問者が増えてきた日光。この地にかつてあった「菖蒲が浜プリンスホテル」を復活する計画があるそうです。こちらには専用のゲレンデがあったので、こちらも復活の可能性ありますね。

またJRグループの人気企画、JRスキースキーに合わせて、万座プリンスホテルを舞台とした「私をスキーに連れてって」。こちらもタイアップ企画などがスタートしたようです。ファミリー層を中心に復活してきたスキーへ力を入れ始めたようです。

2018年1月追記

 

最近気がついたのですが、実は中国にプリンスホテル系のゲレンデを設立していました。松花湖スキー場というかなりの規模のゲレンデです。

2019年12月追記

 

2022年2月に西武ホールディングスから、苗場、雫石、万座温泉、志賀高原の各スキー場とプリンスホテルをシンガポールの政府系ファンド「GIC」に売却することが決まりました。運営自体は引き続き西武が行うようです。このゲレンデ以外も、かぐら、六日町八海山も売却候補だったようですが、こちらはまだ正式発表されていないようです。苗場といえばスキーブームの火付け役、万座・志賀高原は「私をスキーに連れてって」の舞台、雫石と言えば、ワールドカップの会場とプリンスの歴史を感じさせるような場所が変わっていくのも時代でしょうか。これで現在運営しているゲレンデは富良野、妙高杉の原、軽井沢プリンス、狭山、不確定がかぐら、六日町八海山となります。

2022年4月追記

 

GICによる最終的な買収ゲレンデが決定しました。

・苗場/かぐら/志賀高原焼額山/万座温泉/六日町八海山/雫石

検討中だったゲレンデも全て売却されたようです。で、いつも疑問に思うのですが、妙高杉の原は、西武にとってそれほど思い入れがあるとは思えないゲレンデなのですが、他の名だたるゲレンデを差し置いて残りました。この疑問をだれか解決して欲しいです。

東急リゾートグループ

西武鉄道が出たとなると、次の電鉄系はここでしょう。という訳で、東急リゾートです。現在、直で資本が入っているのは、

・ニセコグランヒラフ/グランデコ/マウントジーンズ/ハンターマウンテン/たんばら/タングラム/

 東急蓼科/富士見パノラマ/スキージャム勝山

と9つのゲレンデを所有しております。おっと、たまたまですがプリンスホテルと同数ですね。

 

プリンス系は基本、自社で開発を行っているのに対し、東急リゾートでは、上に挙げた中で「グランデコ」「たんばら」「タングラム」「東急蓼科」が開発から行ったコースになります。

 

なので、すべてのゲレンデで共通するような特徴は正直ありません。しかし、自社開発を行ったゲレンデには特徴があります。

それは「リフト効率が、どこもいい」ことです。このサイトの「グランデコ」「たんばら」のページでも述べましたが、1本のリフトですべてのコースが滑れるように設計されています。タングラムはさすがに横長なので無理ですが、レベル別におすすめのリフトを分けたりしています。

 

そうそう、自社以外でも特徴ありました。それはゲレンデのファシリティに力を入れていることです。ハンターマウンテンなどは、毎年のようにスキーセンターのリニューアルを行っています。東急ハンズを入れた時は少し笑ってしまいましたが。

そのあたりは、もともと「リゾート開発」が会社の礎である点が影響していると思います。

そして、グループ共通券を初めて出したのも、ここ東急系だったと思います。

 

自社、もしくは業務請負をしているリゾート地が近くにあり、あまり経営が芳しくないゲレンデをこれからも傘下に収めていきそうです。

(この文章は2017年3月現在のものです)

 

残念ながら東急グループにも再編の波がやってきたようです。

以前も八方尾根、岩岳、栂池高原などを売却しましたが、今回はグランデコが売却されるようです。正式な入り込みは発表されていませんが、ここ数年、対前年比でマイナスが続いていたようです。また他の猪苗代周辺のゲレンデに比べ雪質がいい反面、そこまでの道のりが険しかったりという点も影響しているようです。

2022年4月追記

西武・東急以外の電鉄系ゲレンデ

電鉄会社とゲレンデの結びつきは意外に強く、上記の2社以外でもゲレンデを所有している会社があります。

 

複数所有ということでは、東武鉄道があります。所有するゲレンデとしましては、

・エーデルワイススキーリゾート/日光湯元/谷川岳天神平

などです。スキー場全体ではないのですが、「蔵王」のロープウェイの運営を行っています。

以前は「たかつえスキー場」も所有していましたが、現在では地元の第三セクターとなっています。

東武のゲレンデは、派手さはないんですけど、どこもアットホームで落ち着きます。

 

 

他、現在もあるのは、自分が知るかぎりは長野電鉄の「奥志賀高原」、阪神電鉄の「六甲山スノーパーク」ですね。

 

以前持っていたということであれば、

 京成電鉄=宮城白石蔵王スキー場(現在はNPO法人 不忘アザレア経営)

 京王電鉄=京王赤倉チャンピオンスキー場(現在は株式会社赤倉温泉スキー場が経営)

 京浜急行=猪苗代リゾートスキー場(現在は南洋ビルサービス株式会社が経営)

 小田急電鉄=ファースト石打スキー場(廃止)

 

しかし、スキー人口の減少と共に、手放してしまったようです。

(なおこの文章は2017年3月現在のものです)

 

間違いがありましたので、修正いたします。「奥志賀高原スキー場」について、現在も長野電鉄が運営していると記載しておりましたが、2007年に投資ファンド、ユニファイド・パートナーズに売却、その後奥志賀高原にあるホテル、ホテルグランフェニックス 奥志賀へ売却となっていました。

 

また、複数所有電鉄会社として、富士急(スノータウンイエティ、あだたら高原)がありました。

以前所有していたゲレンデに、紀州鉄道(パルコールつま恋)を加えます。と言っても、紀州鉄道の本業はほぼ不動産なんですがね。

(2018年1月修正)

 

エーデルワイススキーリゾートについては、東武鉄道が筆頭株主なんですが、東武グループには入っていないようです。どういうことなんでしょうか?

2022年4月追記

 

株式会社マックアース

今をときめく株式会社マックアースです。多分、この会社なくして今の雪山業界はありえません。

現在、ホームページによれば34のスキー場の運営、指定管理を行っています。

もともとはハチ高原内にある「食堂白樺荘」からスタートです。当時はゲレンデサイドの食堂でしたが、社長の「スキー場は、ホテルとセットになることで、相乗効果を狙える」との考えにより、翌年にはヒュッテを開設、1985年に「株式会社パークホテル白樺館」として法人化しました。

 

この会社の運営するゲレンデはすべて、他の会社が債務超過により手放したり、自治体が廃止しようと考えたゲレンデばかりです。

そのため、まずはコストカット。バックヤードの全スキー場の共通化、や設備の直輸入など。そして個性あるゲレンデ作り。今までのなんでもありゲレンデではなく、「ここがいいから」来るようにする点。そして宣伝、訪問機会、導線の創出です。

 

株式会社マックアースの代表取締役CEOの一ノ本達己氏の言う「20年前の映画をずっと見せ続けている」は、従来のゲレンデの進歩のなさを表しています。

確かに、自治体と揉めてしまったり、従業員の話なども出ていますが、「好きだからこそやってもらいたい」という社長の姿勢がいろいろなゲレンデを復活させ、地域活性化につながっていると思います。

 

19歳タダ、20歳は割引の政策を行ったり、「ファミリー専用」「非圧雪専用」等どんどんやっていって欲しいです。

(この文章は2017年3月現在のものです)

 

なんと!この時代にスキー場の新設(14年ぶり)をやってくれました。兵庫県に作った「峰山高原リゾート ホワイトピーク」です。こちら、関空に訪れる訪日客をターゲットに作られたとのことで、雪合戦や雪遊びをする施設も作られました。やはりターゲットを絞り、とことんやる、どうやら客足は順調のようです。

(2018年1月追記)

 

マックアースも、そろそろ取捨選択の時期に差し掛かったかもしれません。運営している一部のゲレンデの運営取りやめや、譲渡が出始めました。「チャオ御岳」からの運営撤退。その結果として、チャオ御岳は2018-19シーズンの営業が未定となりました。また「箕輪」「エコーバレー」「Mt.乗鞍スノーリゾート」「白馬さのさか」については、ブルーキャピタルという再生エネルギー活用会社に譲渡されました。マックアースのみでの活用が難しかった場所が、他リソースによる相乗効果で復活することができるといいですね。

(2019年1月追記)

 

さらに取捨選択が進み、2019年12月現在で、指定管理者も含め運営施設は25箇所となりました。傾向としましては、やはり地元である西日本のゲレンデはそのままで、東日本で運営が難しい所や、運営が軌道に乗り、もともとの自治体に返還したところが多いようです。マックアースは共通券があったので、東日本での運営ゲレンデが減ったのは痛い所ではないでしょうか。

(2019年12月追記)

 

社会情勢の変化もあり、廃止や休止したゲレンデがいくつか出てきました。その結果、現在運営(協力も含む)しているのは、神立スノーリゾート、黒姫高原スノーパーク、Mt.KOSHA X-JAM高井富士、Mt.KOSHA よませ温泉、菅平高原、ひるがの高原、高鷲スノーパーク、ダイナランド、鷲ヶ岳、箱館山、神鍋高原万場、おじろ、氷ノ山国際、ちくさ高原、峰山高原リゾート ホワイトピーク、ユートピアサイオトの16箇所となりました。

(2022年4月追記)

株式会社クロスプロジェクトグループ

こちらも、今勢力を伸ばしつつあるクロスプロジェクトグループです。

もともとはスキー好き&モーグル好きだった社長さんが、スキースクールやウォータージャンプ会場、トランポリンスクールを経てスキー場経営に乗り出してきました。

現在指定管理も含めて10のゲレンデを運営しています。

 ・ノルン水上/伊那スキーリゾート/若杉高原おおや/夏油高原/白馬さのさか/ヘブンスそのはら/
  群馬ホワイトバレー/アップかんなべ/北京静之湖/万龍(中国)

なんと海外まで進出しています。

 

ここの社長さんの方針は「徹底的に特徴を出す」という点。初級がターゲットならば初級、上級がターゲットならば上級と、スキー場のカラーをくっきり出すようにしています。

 

そのため、前述したマックアースグループと同様に、「◯◯したいから、あのスキー場に行こう」という感じでニーズに応えています。

 

しかし、現在マックアースが経営している神立を買収しようとした時、支払い不履行で契約を破棄したりと、まだ未熟な点もちらほら。

これからは、もっとビッグゲレンデの運営などを行って、頑張って欲しいです。実はクロスプロジェクトが運営しているゲレンデに行ったことがありません。

行かねば!

(この文章は2017年3月現在のものです)

 

クロスプロジェクトグループについても、スキー場の趣旨選択が始まっています。ホームページによると、現在運営しているのが「ノルン水上」「伊那スキーリゾート」「若杉高原おおや」「夏油高原」「泉が岳」「ヘブンスそのはら」「アップかんなべスキー場」「佐久スキーガーデンパラダ」といくつか入れ替わりが見られます。先日夏油高原を訪問しましたが、スキー場で働く人が誇りを持って従事している姿を見て、頑張って欲しいところですが。。。。

(2019年1月追記)

 

今年度に入り、いくつかの施設で運営を開始したようです。「八千穂高原」「駒ヶ根高原」です。

(2019年12月追記)

 

今年度も、ばんしゅう戸倉の運営を受託し、運営ゲレンデを増やしたようです。

(2022年4月追記)

日本スキー場開発株式会社

親会社は、日本駐車場開発(NPDのマークの駐車場です)という、ちょっと変わった成り立ちの会社です。こちらは最近白馬近辺のビックゲレンデをつぎつぎ受託し、今では8箇所運営しています。

 ・カワバ/菅平高原/竜王/鹿島槍/白馬八方尾根/白馬岩岳/栂池高原/めいほう

 

ここの社長さん、もともと大学時代はスキー部の主将だったくらいのスキー好き。始めは大手家電メーカに勤務、その後カナダに留学、戻ってからは2年間長野のスキー場近くに住み込みという人。経理とマーケティングの腕を買われ日本駐車場開発に入社。なのですが、ここはスキー好き、社内のスキー場再生プロジェクトから、ここまで至った次第です。

 

なので、ちょっと駐車場やさんらしいなと思うのが、カワバや鹿島槍で行っている駐車場予約サービス、鹿島槍でのキャンピングカー用電源サービス、ゲレンデ近くでのレンタカーなど。

 

なのですが、ゲレンデとしての魅力の点については、マックアース、クロスプロジェクトに比べつっこみが弱いなという印象です。ですが、会社として規模も資金もある所です。これからの運営に期待です。

 

特に駐車場については評判の悪い、八方尾根が変わってくれればなぁ。。。。。

(この文章は2017年3月現在のものです)

 

日本スキー場開発は本気でスキー場経営に乗り出したようです。白馬に本社を登記上も実際にも移しました。その際、わざわざ地元の八十二銀行との取引など地元への融和を図る動きがみられました。社長も実際に長野に移住するということです。実際17年の決算でも黒字が出ていることから、やり方によってはスキー場経営はうまく行くことを証明してくれました。

 

(2018年1月追記)

 

順調に運営ゲレンデを増やしているようで、その後もオグナほかた、みやぎ蔵王えぼしを受託したようです。

(2022年4月追記)

日本ケーブルグループ(アルピナリゾート)

索道会社である日本ケーブル株式会社。索道・ロープウェイの日本シェアでは50%を超えるこの会社ですが、実はコンサルタントを含め雪山ビジネスとして、いくつかのゲレンデを運営しております。

 

最近では、石打丸山の各索道会社を吸収したところです。運営しているゲレンデは八幡平リゾート、スプリングバレー仙台泉、湯沢高原、石打丸山、サンメドウズ清里、びわ湖バレイと6箇所になります。

 

ここの運営しているゲレンデ、少しマイナーな場所が多く「なぜグループなのか」と疑問を感じるラインナップです。

それには理由があります。この運営ゲレンデ、自社ではじめから開発したところはないんです。

順番に行くと、

・八幡平リゾート(松尾村+日本旅行+JRの共同出資)

・スプリングバレー仙台泉(仙台市の第3セクター)

・湯沢高原(湯沢町)

・石打丸山(こちらだけ資料が見つかりませんでした)

・サンメドウズ清里(山梨県)

・びわ湖バレイ(産経新聞)

 

設立はどこも行政やお硬い会社が多いんです。そして、索道の設置を日本ケーブルが行ったところなんです。なのでどちらかと言うと救済の面が強いのかなと感じます。ですが、運営を始めてからは赤字を出さずに進めることができていますので、今後日本ケーブルが救済するゲレンデは増えるのではないかなと思います。

(2022年4月)

その他

上記に上げたグループ以外に、

 

・加森観光

 北海道中心にゲレンデ運営、ルスツ、テイネハイランドなど

 

・鈴木商会

 リゾート開発の老舗、函館七飯スノーパークなど

 

・星野リゾート

 高級リゾートホテルグループ、猫魔・アルツ磐梯・トマムなど

 

などが、複数箇所のゲレンデ運営に参入してきます。

それぞれの特徴がありますが、それはもう少し各社のゲレンデ数が増えてからお話します。